ゴルフクラブでバランスというのは、クラブの取り回し易さを示す指標だ。同じ重さのクラブでも、ヘッド側が重い方が、振り回すのに力がいるはずである。この感覚を数値で表したのが、バランスだ。例えば、メーカーのアイアンセットはバランスを同じにしてある。ショートアイアンとロングアイアンでは、長さが違う。同じ素材で作れば、長い方が、重くなり、ヘッド側に重心が移動して、取り回しも難しくなる。ショートアイアンはヘッドを重めにするなど、このバランスを合わせるように、セットを作っている。
バランスの詳しい定義は、記事「バランス」を参考にして欲しい。具体的には、グリップエンドからクラブの重心までの距離から、14インチ(35.56cm)を引いて、クラブの重量(g)をかけた数値だ。しかし、数値そのままで表さずに、213.5(cm・g)をD0として、1.75刻みで数値をD1、D2というように上げていく。213.5より小さい時は、C9、C8と減らしていく。
物理学的にはクラブの取り回し易さは、慣性モーメントで表せる。クラブのような複雑な形状では、グリップエンドでの実際の慣性モーメントを計算するのは、難しいが、重心に全重量が集中しているとして、簡略化すると、(重心までの距離の2乗) x (重量)となる。距離ではなく、距離の二乗に比例する。
バランスが、数値でなく、記号にしているのは、この辺りのことも考慮しているのだろう。D0とD1の違いは、D1とD2の違いとは、同じ1差でも異なるというわけだ。
重量が同じクラブなら、バランスは取り回し易さの違いとして、成り立つが、同じバランスで重さが違うクラブの取り回し易さは、物理学的には、やはり違うことになる。重さが違い、バランスが同じなら、重い方のクラブは、重心位置が、グリップエンド側に寄っているはずである。一方、慣性モーメントは距離の二乗に比例するので、10gの違いで生じた10cmの違いは、二乗の100として効いてくる。同じバランスなら、10g重いクラブの方が、慣性モーメントが100小さくなる。これが感覚的にわかるかどかは、重量差にもよるので、微妙だ。1gの違いだと、わからないだろうが、5g、10gとなると違ってくるはずである。
さて、本題に戻って、「重りをつけたらバランスが変わるか?」という問題を考えてみると、「変わる」が答えだ。ショップなどで、バランスを計測するメーターをおいているところもあるので、5g程度の重りをヘッドにつけて、実際に試してみると良いだろう。
しかし、重りをつけて、取り回し易くできるかと問われれば、答えは「No」である。慣性モーメントは足し算ができる。どこに重りをつけても、グリップエンドからその重りまでの距離の2乗とその重さの積が元の慣性モーメントに加わるので、物理学的に考えると、慣性モーメントは増える一方で、取り回しが難しくなる。
ヘッド側が軽くて上手く振れない場合、重りをつけるて、改善はできるが、逆に、ヘッド側を軽くしたいと、重心よりグリップエンド側、例えばグリップとシャフトの境目に重りをつけても、取り回しは改善しないことになる。
最近、流行りのドライバーはねじ式の重りで、ヘッドの重量を調整できる。これなら、重り自体を外したり、軽いタイプに変えるなどして、取り回し易くもできるはずだ。
私の古いドライバーは、そんな芸当はできない。振り回しにくいからと言って、改造はできないということだ。もっと、軽いドライバーに買い換えるしかない。あとは、スイングを改善するしかない。
次に買い換えるなら、軽くて、バランスの小さめのクラブを選んでおくのが、得策だ。重りをつけて、治せるからだ。重くて、バランス値が大きいと、重りをつけて、振り易くはならない。